宗教教育は一般に、宗教系私立学校で実施される「宗派教育」、複数の宗教を知識として学ぶ「宗教知識教育」、人間のもつ宗教性に働きかける「宗教的情操教育」に区別され、論じられてきた。議論の焦点が公立学校における宗教教育の可否に集中しているため、宗教教育の実施自体の可否を問われることのない私立学校の宗教教育は、開かれた公の議論の場に登場することが少ない。このことは、一面では甘やかしにつながり、批判的な眼で宗教教育の可能性を考え抜こうとする土壌を育てにくくする。同様のことは、私立学校である南山大学附属小学校の宗教教育にも当てはまる。
　南山大学附属小学校の宗教教育を考えるにあたっても、つねに上述の事柄には自覚的でありたい。宗教教育の可能性をいっそう推進していくため、本校の教育のモットー「かけがえのないあなたと私のために」（南山学園の教育モットー「人間の尊厳のために」を言い換えたもの）を原動力とする必要がある。
　こうした前提のもと、今回の発表では、まず本校の宗教教育の概要および現状を紹介し、次に、児童の生活指導や保護者対応との連携の取り組みを紹介したい。宗教教育が、単なる「しつけ」や「お飾り」に終始することなく、教育モットーの実現に資するものとなっていくにはどうすればよいか、議論を深めたい。