公開講演会
2010年度 春の公開講演会
演題 | 悲嘆について学ぶ ―なぜ、グリーフケア研究所の設立が必要なのか― |
講師 | 高木 慶子 氏 (聖トマス大学名誉教授・上智大学グリーフケア研究所所長) |
日程 | 2010年6月23日(水)18時00分~20時00分 |
会場 | 南山大学 名古屋キャンパス D棟DB1教室 |
チラシ | |
参加費 | 無料 |
概要 | 「人生は喪失体験の連続である」と言われているが、本人にとって大事なものを喪失した後の苦しみ辛さは、それを経験した者でないと理解することは非常に困難なことでもある。私はこの20年間、家族を亡くした遺族の悲嘆ケアに協力させていただいている。その経験から具体的に考えると、愛する家族を亡くした後の遺族の苦悩や苦痛を「悲嘆(グリーフ)」と呼んでいるが、この悲嘆を経験していないものには、家族を失った人々の悲嘆を理解することは容易なことではないことを実感している。しかし私達は、自分の死を体験する前に、家族を看取ることは多いと思うが、この事実は今に始まったことではなく、生命有るものが存在した時点からの現象である。それがなぜに、今の日本社会で「グリーフケア」が問題となっているのか。これに答えるのが「グリーフケア研究所」の存在であると考える。一昔前の日本は大家族であり、そこには多角な人間関係があった。3代に及ぶ世代や、向こう三軒両隣の地域社会などの人間関係が濃厚であった。このような関係の中で、家族を失い悲嘆にある人々の多くは癒されていたのではないだろうか。しかし、現代日本社会は核家族化が進み、地域社会の人間関係も希薄となっている。そのような状況では家族を亡くして苦しみ悩む人々に寄り添う隣人は少なく、意識して「癒し」を求めなければならない人々も増加しているのが現状ではないかと考える。そのためにも「グリーフケア」を専門にする人々の養成が急務となっており、それに答える形として、「グルーフケアワーカーの教育」を目的として研究所を設立したのである。 |
講師プロフィール | 高木 慶子 (たかき よしこ)氏 聖心女子大学文学部卒業。上智大学神学部博士課程前期修了。博士(宗教文化)。 現在 聖トマス大学名誉教授、上智大学教授・同学グリーフケア研究所所長、「生と死を考える会全国協議会」会長、「兵庫・生と死を考える会」会長、「日本スピリチュアルケア学会」副理事長、国土交通省「公共交通における事故発生時の被害者支援のあり方検討会」委員、援助修道会会員 など。 20年来ターミナル(終末期)にある人々のスピリチュアルケア、及び悲嘆にある人々(家族や親しい友人を亡くした人)のグリーフケアに携わる一方、小学、中学、高校の学校教育現場で使用できる「生と死の教育」カリキュラムとそのビデオを制作し、大人にも子どもにも理解できる「いのちの尊さと大切さ」や「生と死の問題」「子育てに関する問題点」「人生の真の意義とは何か」など幅広い分野で全国的にテレビや講演会などで活躍中。また「子育て支援活動」や「男女参画社会支援活動」などでも活動。 最近は、「悲嘆とは何か」について、また特に「悲嘆ケア(グリーフケア)」の日本社会での必要性と重要性について社会的な認知度を高めるために活動を続けている。 【受賞歴】「カトリック大学連盟 カトリック学術研究奨励賞」受賞、「神戸新聞 第63回平和賞」受賞、 「財団法人兵庫地域政策研究所機構 第7回21世紀のまちづくり・研究部門賞」受賞、など。 【著 書】『喪失体験と悲嘆-阪神淡路大震災で子どもと死別した34人の母親の言葉-』(医学書院)、『輝いて人生 -日野原重明氏との対談集-』(学習研究社)、『死と向き合う瞬間-ターミナル・ケアの現場から-』(学習研究社)、『高木仙右衛門の覚書の研究』(サン・パウロ)[カトリック大学学術研究奨励賞受賞]、『大震災-生かされたいのち-』(春秋社)、『生きる』(春秋社)、『聖書によるキリスト』(サン・パウロ)、『希望へのかけ橋』(みくに書房)、『母の祈り』(聖母の騎士社)など他多数 |