公開講演会
2009年度 春の公開講演会
演題 | 〈育てられる者〉から〈育てる者〉への世代間伝達を考える |
講師 | 鯨岡 峻 氏 (中京大学心理学部教授・京都大学名誉教授) |
日程 | 2009年6月24日(水)午後6時~8時 |
会場 | 南山大学 名古屋キャンパス D棟DB1教室 |
チラシ | |
参加費 | 無料 |
概要 | 初めて親になるとき、そこには大きな人生の節目があります。「育てられる者」から「育てる者」へと立場が180度変わるからです。初めて「育てる者」になるとき、自分がこれまで育てられて育ってきたことが改めて納得できるようになります。「子育てをしてみて初めて親のありがたみが分かる」と古くから言われてきたことが、自分の経験として理解できるようになるとき、人として生きることが自分だけのことではなく、世代から世代へと循環していくものだということも、漠然と理解できるようになるはずです。 初めて祖父母の立場になるときにも、それに似た経験が生まれます。自分がかつて潜り抜けた「親になる」という初めての経験を、いま自分の子どもが潜り抜けようとしています。それを温かく見守り、できるだけの配慮をするのが祖父母になった者の役目だと思ってはいても、孫可愛さから、つい口や手が出すぎてしまうということもあるでしょう。そのとき、自分の子が生まれ、初めて祖父母となった自分の親が自分や孫にしてくれたこと、してくれなかったことが思い返され、それがいま、祖父母になった自分の振舞い方を導いてくれるということもあるでしょう。 人生に訪れるこの二度の節目をどのように通過するのか。そこにそれぞれの家族のドラマが生まれます。ただしそのドラマは家族だけに閉じられたものではなく、その展開は地域の人たちがどうその家族を支援するのかによっても大きく左右されるはずです。こうした世代間で繰り返される「育てる-育てられる」という関係の営みを、地域社会をも含めて考えてみたいと思います。 |
講師プロフィール | 1943年秋田県生まれ。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程を修了。京都大学博士(文学)。京都大学名誉教授。 1970年に島根大学教育学部に助手として赴任、以来、講師、助教授を経て、1988年に同教授。1995年に京都大学大学院人間・環境学研究科に移り、2007年3月、定年退官。2007年4月より中京大学心理学部教授。現在に至る。 専門は、発達心理学、発達臨床心理学、保育心理学。主に関係論の立場から、発達や保育や障碍児教育の問題を考えており、そのための方法論として、関与観察とエピソード記述を提唱している。主な著書に『〈育てられる者〉から〈育てる者〉へ』(NHKブックス)、『関係発達論の構築』(ミネルヴァ書房)、『エピソード記述入門』(東京大学出版会)、『よくわかる保育心理学』(ミネルヴァ書房)などがある。『両義性の発達心理学』(ミネルヴァ書房)は保育学会文献賞を受賞。 |