研究活動 過去の活動報告
公開シンポジウム「移動と流行:現代中国のコンタクト・ゾーン」実施
2017年12月02日
[日時]2017年12月2月(土)、13:00~18:00
[会場]南山大学R65教室
[共催]共同研究「現代中国における内国移動とエスニシティ」(助成:科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業)
[協力]東北大学東北アジア研究センター共同研究「移動と流行:移民がもたらしたもの/持ち帰ったもの」
[プログラム]
13:00 開会挨拶 後藤明(南山大学)
13:05 趣旨説明 宮脇千絵(南山大学)
13:15 発表
1.「移動する人々がもたらしたもの―改革開放後の広東省珠江デルタの日常から」
川口幸大(東北大学)
2.「都市に出る人、都市に来る人・戻る人―広東省仙尾の事例から」
稲澤努(尚絅学院大学)
3.「中国内モンゴル地域における人の移動がもたらしたもの―18世紀から20世紀半ばまでの事例から」
ボウ・サラ(東北大学大学院)
4.「動く回族とイスラーム復興―雲南省における宣教活動の事例から」
奈良雅史(北海道大学)
14:45 発表
5.「出稼ぎ労働者のレジャータイムに関する一考察」
貴明玥(京都大学大学院)
6.「モノと技術がもたらす日常の変化―雲南省ハニ族の村落からみた移動と流行」
阿部朋恒(首都大学東京大学院)
7.「出稼ぎ移動がもたらす呪術の流行―雲南省ラフ族の事例から」
堀江未央(名古屋大学)
8.「移動する商人と「民族衣装」の流行―雲南省モンのエスニシティ」
宮脇千絵(南山大学)
16:20 コメント1 佐藤若菜(新潟国際情報大学)
16:35 コメント2 上水流久彦(県立広島大学)
16:50 総合討論
18:00 閉会
[報告]
内国移動が活発化する現代中国において、これまで出会わなかった人びとが、新たな接触の場(=コンタクト・ゾーン)において、何をやり取りし、シェアするのでしょうか。本シンポジウムでは、中国をフィールドに調査する発表者が、多様化する移動と、そこでやり取りされ流行するもの、その流行が象る新たな関係性について、事例を持ち寄り報告しました。
現在中国では、内陸部からの出稼ぎ労働者を受け入れる沿海都市部(川口幸大、稲澤努、貴明玥)、継続的に漢人移民を受け入れてきた内モンゴル(ボウ・サラ)、宗教教育を目的とした回族の実践(奈良雅史)、内陸農村部における都市部や他地域への移動(阿部朋恒、堀江未央、宮脇千絵)といった多様な移動のフローがみられ、くじ販売店やバー(川口)、物資運搬の場(稲澤)、飲食店(川口、稲澤、貴)、宗教施設(奈良)、出稼ぎ先の都市部(阿部、堀江)、定期市(宮脇)など、さまざまなコンタクト・ゾーンが展開していることが分かりました。そこでやり取りされ、持ち帰られ/もたらされ、流行するものにも、新しい味覚(川口、稲澤)、新たな生業(ボウ)、学習経験(奈良)、スマホやそれを通じたアプリ(貴、阿部)、呪術(堀江)、衣装デザイン(宮脇)など、多岐にわたるものが報告されました。
コメンテーターからは、中国における都市/農村、漢族/少数民族といった非対称な状況を支えるものはなんなのか(佐藤若菜)、モダン(新規性)-反モダン軸、実用性(定着)-押しつけ軸の対比による流行の捉え方(上水流久彦)といった論点が出されました。
フロアの質疑応答からも、多くのキーワードが浮かび上がりました。個別具体的な事例を持ち寄ることで、フィールドでふだん目にしているものの、これまでとりたてて注目してこなかったような、「文化」として括るには取るに足らないような事象に迫ることができたのではないかと考えます。
シンポジウムの様子 | 趣旨説明 |