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公開講演会「新しいヒトの学を目指して」
2010年06月23日
[日時]2010年06月23日(土)、14:00~17:30
[会場]南山大学名古屋キャンパスB棟B22教室
[主催]南山大学人類学研究所
[講師]神奈川大学招聘教授・川田順造氏
[趣旨]
現生人類である私たちヒトは、文化を作り継承する唯一の生物だが、文化はヒトの身体が生みだし、同時に文化によって身体の使い方が条件付けられる。二重に分節された言語で自己表現することから始まって、文化によって異なる、歩き方、挨拶の仕方、物の運び方、道具の使い方など、ヒトの身体と文化の相互作用が、世界の文化の多様性を作り出してきた。
アフリカを出て地球上に分散した私たちホモ・サピエンスは、それぞれの生態条件に合った多様な文化を生み、精練してきた。それから10万年あまりたった今日、60億に増殖し、他の生物種を日々絶滅に追いやっている私たちは、情報、経済のグローバル化によって、自分たちの文化の多様性を失おうとしている。地球の資源や環境も危うくなってきた現在、700万年前に他の霊長類から分かれ、木から下りて二足歩行を始めたことがすべての出発点になったヒトのこれからを、広く長い視野で考え直すことが求められている。
[講師略歴]
1934年、東京生まれ。東京大学教養学科文化人類学分科卒業。パリ第5大学民族学博士。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授、広島市立大学国際学部教授を経て、現在神奈川大学特別招聘教授、神奈川大学日本常民文化研究所客員研究員。1991年8年にわたる国際共同研究 "Boucle du Niger"とその成果のフランス語報告書の刊行によりフランス学士院よりフランス語圏大勲章を受章。1994年フランス政府よりフランス文化への貢献により文化功労章受章。2001年紫綬褒章、2006 年第1回日本文化人類学会賞、2009年文化功労者。
◆受賞著作 『曠野から─アフリカで考える』第22回日本エッセイスト・クラブ賞(筑摩書房1973、中公文庫1976)、『無文字社会の歴史』日本民族学振興会第8回渋沢敬三賞(岩波書店1976、岩波現代文庫2001)、『サバンナの音の世界』昭和57 年度文化庁芸術祭レコード部門優秀賞(レコードアルバム東芝EMI 1982、増補カセットブック白水社1988) 、『聲』第26回藤村記念歴程賞(筑摩書房1988、ちくま学芸文庫1998)、『口頭伝承論』第46回毎日出版文化賞(河出書房新社1992、平凡社ライブラリー2001)。
◆その他の主な著書 『文化を交叉させる-人類学者の眼』青土社2010、『文化の三角測量 川田順造講演集』人文書院2008、『もうひとつの日本への旅 モノとワザの原点を探る』中央公論新社2008、『文化人類学とわたし』青土社2007、『母の声、川の匂い―ある幼時と未生以前をめぐる断想』筑摩書房2006、『コトバ・言葉・ことば―文字と日本語を考える』青土社2004、『アフリカの声―「歴史」への問い直し』青土社2004、『人類の地平から―生きること死ぬこと』ウェッジ2004、『人類学的認識論のために』岩波書店2004、他多数。
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