研究活動 過去の活動報告
公開講演会「Classification as a Memory Practice-The Case of Blodiversity」
2016年02月27日
[日時]2016年2月27日(土)13:30~18:00
[会場]南山大学人類学研究所1F会議室
[講師]Prof.Geoffrey C. Bowker (University of California, Irvine)
[報告]
ジェフリー・バウカー教授(カリフォルニア大学アーバイン校)をお招きして、公開講演会を開催した。バウカー教授の専門領域は情報科学、科学技術社会論で、"Sorting Things Out"(1999)や"Memory Practices in the Science"(2008)といった著作がある。また今回の講演会には、バウカー教授のご夫人で、認知科学を専門とするジュディス・グレゴリー准教授(カリフォルニア大学アーバイン校)も同席された。参加者は全体で20人程度だった。 講演タイトルは、"Classification As A Memory Practice: The Case Of Biodiversity"である。データベースはどのように構築されているのか。この講演会では生物多様性を事例として、データベースの抱えている「社会性」を浮き彫りにすることがテーマである。
バウカー教授はまず、生物多様性をめぐる分類方法には、①Listと②Currencyの2通りと指摘した。「List」とは、膨大な情報を樹形図のように関連づけて整理・分類する方法である。「Currency」とは、多様な情報を価値評価することによって整理・分類する方法である。たとえば生物多様性の領域においては、①直接的な使用価値(食料、薬など)、②間接的な使用価値(気候の調整など)、③非使用価値(将来的な潜在価値など)といった価値付けの元、様々な生物が分類されている。
次に「synchronization」というテーマで、「モノのインターネット」に代表されるような、情報技術を介して様々な「もの」を制御する仕組みについて紹介された。牛の歩数や体温をモニタリングすることによって牛の健康管理や繁殖管理をしたり、光や水をモニタリングすることによって農作物を生産したりする仕組みなどである。
最後に「the scientific archive」というテーマで、人間の分類実践やデータベース作成の背後にある政治性や様々なバイアスについて説明された。このような議論を踏まえて、「我々がつくる世界とは、結局、我々が保持している記憶である」という結論が示された。 続く質疑応答では、「生物多様性についての情報を分類したり蓄積したりすることが、生物多様性の未来にどのような影響をもたらしうるか」といった問題について、活発に議論が交わされた。
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