研究活動 過去の活動報告
公開研究会「人類学研究所の新展開を考える」
2015年03月12日
[日時]2015年3月12日(木)13:30~17:30
[会場]南山大学人類学研究所第1会議室
[講師]藏本 龍介(東京大学大学院総合文化研究科)、藤川 美代子(神奈川大学日本常民文化研究所)、宮脇 千絵(国立民族学博物館)
[司会]後藤 明(南山大学人類学研究所長)
[趣旨]
人類学研究所が再スタートしてから 5 年が経過した。この間、第二種研究所員によって 公開講演会、公開研究会、共同研究、年報や論集の刊行など一定の成果を収めてきたと言 える。そして2015 年度から新たに 2 名の第一種研究所員を招聘し、また同年度から 3 ヶ年 で実施される国際化推進事業もスタートしその専任の研究員も招くことになっている。こ のような新しい状況において、研究所の中長期的な展開を考えることは時宜をえたことで あろう。今回は 3 人の若手研究者をお招きして、自らの調査研究の経験から人類学研究所 の新たな展開に対する提言をしていただき、来年度以降の活動について研究所員と意見交換を行いたい。
[プログラム]
13:30-14:30 藏本 龍介(東京大学大学院総合文化研究科学術研究員)
「ミャンマーの僧院研究から」
14:30-15:30 藤川 美代子(神奈川大学日本常民文化研究所特別研究員)
「中国福建省の連家漁民研究から」
15:45-16:45 宮脇 千絵(国立民族学博物館外来研究員)
「中国雲南省ミャオ族研究から」
16:45-17:30 総合討論
コメント1 藏本 龍介、コメント2 藤川 美代子、コメント3 宮脇 千絵
意見交換
[報告]
藏本氏はミャンマーの僧院での参与観察から、出家者が世俗を否定しながらもお布施で実際は生活し、修行や布教を行うという、一種の必然的な矛盾を分析し、宗教組織のありかたに根本的な再検討の視座を提唱した。藤川氏は中国福建省の家船生活者である連家漁民の名付けと名乗りの動的な関係から、マイノリティ集団のアイデンティティ形成の実践的な考察を行った。宮脇氏は中国雲南省のモン族の女性用衣装の膨大なデータ分析に依拠した、服飾とアイデンティティ、さらに流行やグローバリズムの視点からの分析結果を提示した。
そのあと3人は今後の人類学研究所で行う可能性のある共同研究や講演会などについて提言を行った。
藏本氏は宗教組織を含めて「非営利団体の経営」という一種矛盾をはらんだ組織経営についての比較研究を提唱し、所員からさまざまな可能性についての意見が出された。また「建築人類学」をテーマにした公開シンポジウムの提案も行われた。
藤川氏は移動する集団あるいは「非定着集団」の動態を比較研究する共同研究を提案した。定着と移動、あるいは非定着は余儀なくされるのか、自主的な選択なのか、あるいは非定着が常態の場合もあるかなど、意見交換が行われた。
宮脇氏は災害における手工芸など小規模産業の衰退化および逆に復興手段としての新しい工芸の模索を日本やアジア諸国と行うプロジェクトの提案を行った。
なお藏本氏と藤川氏は第一種研究所員、宮脇氏は国際化推進事業の担当研究員として4月から本研究所に常勤する新メンバーとなる。
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