研究活動 過去の活動報告
(共催)中部地区研究懇談会(中部人類学談話会)第222回例会 「劣悪なガヴァナンスの人類学へ向けて」
2014年04月12日
[日時] 2014年4月12日(土)13:30~
[会場]南山大学R棟R31教室
[講師]湖中 真哉(静岡県立大学)、佐川 徹(慶応大学)、 早川 真悠(久米田看護専門学校)
[共催]中部地区研究懇談会(中部人類学談話会)、科学研究費補助金挑戦的萌芽研究「東アフリカ牧畜社会における劣悪な国家ガヴァナンスへの民族誌的接近法の開拓(課題番号: 24651275)
[趣旨]
今日の人類学は、民族誌的研究を通じて、様々な地球規模の課題に取り組むことを期待されている。しかし、グローバルな協力活動と、周縁社会の現場コミュニティの間には、途上国国家の劣悪なガヴァナンスの問題が立ちはだかっている。「最底辺の10億人」に対しては、いくら国際的支援を積み重ねても、劣悪な国家ガヴァナンスに阻まれて、末端に行き届かない現実がある(コリアー 2008)。文化相対主義を信奉してきた人類学者は、在来文化の賛嘆すべき特徴を発見してきた一方、汚職、賄賂、悪政等、当地の劣悪な国家ガヴァナンスの問題については目を瞑り続けてきた。途上国の悪政を批判すれば、ただちに人類学者にとって最大の恥辱である「植民地主義者」のレッテルを貼られてしまう。それゆえ、今や政治学等他分野の研究者が「ビッグマン」等の人類学的概念を援用して汚職を分析したり、悪政下の妖術の流行について分析したりしている奇妙な状況にある。 ガヴァナンス概念の要諦は、「政府なき統治(Rosenau & Czempiel 1992)」であるが、国家が機能不全を起こしている状況では、人々は、文字通り政府なき統治の問題に直面する。そこでは、構造機能主義より、「構造的機能不全主義(structural dysfunctionalism)(Biggs 2002)」や「無秩序の政治的道具化(political instrumentalization of disorder)(Chabal & Daloz 1999)」といった理論的射程が要請される。劣悪なガヴァナンスを生きる人々は、構造的機能不全のなかで、どのような生の在り方を実現しているのだろうか。この懇談会では、アフリカの3つの地域の事例を検討しながら、倫理的・方法論的困難を孕みながらも、レヴィ=ストロースの言葉を借りれば考えるに適している(Haller & Shore 2005)この領域から人類学の可能性を考えてみたい。(中部人類学談話会ウエブからの転載)
[プログラム]
13:30-14:30 湖中 真哉(静岡県立大学)
報告 1「劣悪なガヴァナンスの人類学へ向けて─A 国牧畜社会の紛争の事例 から」
14:30-15:30 佐川 徹(慶応大学)
報告 2「民主的開発主義と「無責任の体系」―大規模開発と B 国周縁社会の 行く末」
15:45-16:45 早川 真悠(久米田看護専門学校)
報告 3「自国通貨の機能不全と人びとの経済活動-C 国ハ イパー・インフレの事例から」
16:45-17:15 総合討論
報告の様子 |
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