研究活動 過去の活動報告
公開講演会「人類学者はなぜそこにいたのか」(次期共同研究プレフォーラム2)
2012年12月15日
人類学研究所次期共同研究「危機の人類学」プレフォーラム2
[日時]2012年12月15日(土)13:30~17:00
[会場]南山大学人類学研究所1F会議室
[講師]中生 勝美(桜美林大学教授)、角南 聡一郎(元興寺文化財研究所主任研究員)
[趣旨]
話者は2人とも人類学者あるいは民俗学者として核廃棄物処理施設の生み出す雇用やダム建 設に伴う村の移転費用を巡って亀裂が生じるような状況にある地域社会の中でフィールドワー クをした、あるいはせざるを得なかった。そのとき研究者としてどのようなポジションをとった か、現場体験からスリリングなお話をお聞かせ願えるだろう。そして人類学のフィールドワーク の意味について根本的な議論が期待できるだろう。
[プログラム]
1330-1340 趣旨説明:後藤 明
1340-1440 中生 勝美(桜美林大学教授)
「台湾蘭嶼島の放射線量測定調査と政治バランス」
1440-1450 休憩
1450-1550 角南 聡一郎(元興寺文化財研究所・主任研究員)
「奈良県吉野郡におけるダム設置と地域社会-S 地区の移転に伴う民俗調査を通じて-」
1550-1630 質疑応答
[報告]
今回の研究会は危機的状況下にあるコミュニティにおいて人類学者が調査に赴く際、どのようなポジションをとったのか、あるいはとるべきであるかを考えるものであった。
2011年の大震災のあと、人類学会でも専門性を活かしながらどのように大震災の復興に貢献すべきか議論がなされている。それに直結する課題懇談会(共同研究)も開始されているが、議論の一つは被災地にボランティアなどとして入る場合と調査者として入る場合のポジションの大きな違いである。正直に言ってなかなか一歩を踏み出せない研究者も少なくないであろう。このような状況のもと、危機的状況にある地域に入って調査を続けてきた研究者から生々しい体験を聞くために計画されたものである。
まず台湾先住民の暮らす島に建設された各所理施設と関連し、放射線量について台湾電力側と日本の人類学者が組織した調査チームとの結果の乖離を巡る騒動を中生氏が報告した。線量計を持って行っても台湾電力側と日本側とでは同じ地点でも値が違うとか、人類学者ではその(科学的)専門性を問われるなど、人類学者はどこに身を置くべきなのか議論がなされた。
角南氏は勤務する文化財研究所が県から請け負った、ダムに沈む村の民具緊急調査の体験を語った。移転を巡り住民の間にも亀裂が入るような状況下、そもそも民具や民俗情報を記録して残すことの意味という本質的な問題に突き当たった実態を具体的に報告した。
講師中生氏(右)、角南氏(左) | 研究所員と大学院生 |