研究活動 活動報告
第6回公開講演会「メキシコ、トルーカ盆地における人と水の考古学」実施
2018年11月23日
[日時]2018年11月23日(金)、17:00~18:30
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[会場]南山大学S棟、S74教室
[主催]南山大学人類学研究所
[共催]南山大学人文学部人類文化学科
[講師]杉浦洋子(El Colegio Mexiquense・特別研究員)
[司会]渡部森哉(南山大学人類学研究所)
[講師紹介]
メキシコ国立自治大学(Universidad Nacional Autónoma de México)で博士号(人類学)取得、メキシコ国立自治大学・文学部・人類学調査研究所・専任研究員を経て、現在「エル・コレヒオ・メヒケンセ(El Colegio Mexiquense)」、特別研究員。
研究テーマは、メキシコ州トルーカ盆地を研究の主な対象地域とし、セトルメント・アーケオロジー、そして土器生産や生業復元に関する民族考古学。1997 年からは同盆地のサンタ・クルス・アティサパン遺跡やその周辺地域で発掘調査を率い、古環境を復元すると共に、水と人との関係を中心に古代史理解に努めてきた。その他、地域社会への学術的貢献にも関心を持ち、コミュニティー・ミュージアムの設立にも携わってきた。
[要旨]
メキシコ中央高原における考古学研究は、常にメキシコ盆地の社会動向を対象とするものでした。それは恐らく、古代メソアメリカ文明の中で多大な影響力のあった大国家テオティワカン、そしてアステカ王国の首都テノチティトランがあるからかも知れません。その結果、この盆地の西方に位置するトルーカ盆地での考古学調査は、残念なことに長年対象にはなりませんでした。
私は、研究対象として一般的には魅力的ではないと言えるこのトルーカ盆地で、40数年間にわたり考古学研究を行ってきました。25年前からは特に人と水との関係に注目し研究を実施してきたため、今回の講演ではこれを中心テーマにしたいと思います。その中でも、1)この関係がいかにトルーカ盆地の歴史に深い影響を与えて来たか、2)今から1500年ほど前に湖畔・湿地文化を栄えさせた人々の日常生活がどれほど複雑なものであったのか、3)それを可能にした当時の社会がいかに組織化されていたのかについて、様々な観点からお話ししたいと思います。
この「人と水の考古学」という研究テーマにたどり着けたのは、そしてこのテーマをより深く研究する必要性を感じることができたのは、初めの研究テーマとして、トルーカ盆地でセトルメント・アーケオロジー(Settlement archaeology)を実施したことと大きく関係しています。同時に、現在でも生業として湖畔・湿地文化を継承する村人たち、そして土器製作で生計を立てる人々を対象とした民族考古学研究の実践とも関連しています。この様な考古学を行わなければ、水源と水産資源に恵まれたこの盆地でどのように古代人たちが生きたのかについて、今からお話しさしあげる成果は得られなかったでしょう。私の考古学方法論としてとても重要であるため、これらを関連させながら講演を進めたいと思います。
[報告]
長らくメキシコを拠点として考古学調査を行ってきた杉浦洋子先生に、これまでの研究について語っていただいた。メキシコ中央高原のメキシコ盆地の西部に位置するトルーカ盆地で、人々がどのような生活を送っていたのか、そしてテオティワカンなどの大都市とどのような関係があったのかなど、長いタイムスパンでお話しになった。
これまで大規模建築や墓など目立つ遺跡ではなく、当時の人々に寄り添い、人々がどのように生活していたのかに着目して研究されてきた先生の講演は、当時の人々の息づかいを再現するような内容であった。水をどのように利用したのか、何を食べていたのか、そこに住んでいた人々の遺伝子は現在の人々とどのような関係にあるのかなど、聴衆の興味を惹きつけるトピックが取り上げられた。
杉浦洋子氏 | 質疑応答の様子 | 会場の様子 |