研究活動 活動報告
2018年度第2回映画上映会「女を修理する男」実施
2018年12月16日
[日時]2018年12月16日(日)、14:00~17:30(13:30開場)
[会場]南山大学D棟DB1教室
[主催]南山大学人類学研究所
[共催]コンゴの性暴力と紛争を考える会、UNITED PEOPLE
[プログラム]
14:00~14:10 趣旨説明
14:10~16:05 映画『女を修理する男』 (2015年制作・ティエリー・ミシェル監督・112分)
16:05~16:20 休憩
16:20~17:30 解説・討論
司会:石原美奈子(南山大学人文学部/人類学研究所・教授)
パネリスト
米川正子氏(コンゴの性暴力と紛争を考える会・代表)
ムンシ ロジェ ヴァンジラ(南山大学国際教養学部/人類学研究所・教授)
関根健次氏(UNITED PEOPLE・代表)
※参加無料・予約不要
[映画概要]
「女性と少女にとって世界最悪の場所」とも描写されるコンゴ東部。
コンゴ戦争が勃発してから20年が経つ。その間、「紛争鉱物」の実態に関する認知は高まり、国際社会はその予防策に取り組んできた。しかし、コンゴ東部の状況は改善されないまま、この地域に住む人々の苦しみは続き、大勢の女性、少女、そして男性が性暴力の被害にあっている。紛争鉱物、グローバル戦争経済と組織的な性暴力は相互関係にあるが、その事実はほとんど知られていない。
映画「女を修理する男」は、暗殺未遂にあいながらも、医療、心理的、そして司法的な手段を通して、婦人科医のデニ・ムクウェゲ氏が性暴力の生存者を献身的に治療する姿を映している。それに加えて、生存者の衝撃的な証言、加害者の不処罰の問題、希望に向かって活動する女性団体、そしてこの悲劇の背景にある「紛争鉱物」の実態も描かれている。
ムクウェゲ氏は1999年、コンゴ東部のブカブにてパンジー病院を設立し、これまで4万人以上のレイプ被害者を治療し、精神的ケアを施し続けてきた。被害者の保護活動だけでなく、本問題の根本的な解決のために、ムクウェゲ氏は国連本部をはじめ世界各地でレイプ被害に関する演説を行い、女性の人権尊重を訴えてきた。その活動が国際社会で評価され、これまで国連人権賞(2008年)、ヒラリー・クリントン賞(2014年)、サハロフ賞(2014年)などを受賞した。ノーベル平和賞受賞者の有力候補にも数回挙がっており、2016年5月のタイム誌に、「最も影響力のある100人」に選ばれた。2018年、ノーベル平和賞を受賞。
[報告]
2018年ノーベル平和賞を受賞したコンゴ民主共和国のデニ・ムクウェゲ医師の活動を描いたドキュメンタリー映画『女を修理する男』の上映会を実施しました。この上映会は、1998年から2008年まで通算4年間コンゴ東部、西部と首都キンシャサで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)職員として勤務した経験のある、米川正子氏(立教大学特定課題研究員)の申し出により実現しました。米川氏は、2016年に「コンゴの性暴力と紛争を考える会」を発足させ、同映画に日本語字幕をつけて全国各地で上映会を開催し、コンゴの紛争、およびその下で多くの女性が性暴力の被害にあっている現状について教え広める活動を展開しています。
映画上映終了後、米川氏より、①紛争下の性的テロの実態、②ルワンダ虐殺とコンゴ紛争との関係、③ムクウェゲ医師のノーベル平和賞受賞の意義、について解説が行われました。さらに、本学国際教養学部准教授でコンゴ人神父でもあるムンシ・ロジェ・ヴァンジラ氏より、①コンゴの紛争の構図、および②コンゴ人からみたムクウェゲ医師の存在、について解説が行われました。会場には、学生が数名みられたが、多くが学外から参加された一般市民の方々であり、コンゴの医療事情、国家や女性の役割、などに関する多くの質問が上がりました。また、性暴力が決して遠いアフリカ特有の現象でも、また紛争下という特殊な状況に限った出来事ではなく、日本国内でも起きているとする意見も出てくるなど、関心の高さがうかがわれました。
米川正子氏 | ムンシ ロジェ ヴァンジラ氏 | |
フロアとの質疑応答 | 司会の石原美奈子氏 | 関根健次氏(UNITED PEOPLE) |