研究活動 活動報告
第1回公開講演会「Coexisting with Wildlife: What the Matagi Can Offer the Wider World 野生動物との共存問題-マタギの文化から学ぶこと」
2019年06月24日
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[日時]2019年6月24日(月)、17:00~18:30
[会場]南山大学人類学研究所1階会議室
[講師]Scott Schnell氏(アイオワ大学)
[司会]ドーマン・ベンジャミン(南山大学人類学研究所・第一種研究所員)
[使用言語]日本語
[講演要旨]
マタギは、熊狩りが有名な北日本の山間部における伝統的な猟師である。マタギは、返報の崇拝を期待しつつ彼らを見守り持続させるという意識的存在として自然を認識している点では、ネイティブアメリカンや他の先住民猟師と類似している。このような"アニミズム" という概念は、環境のための責任だけでなく、環境に対する責任を促進している。産業化された西欧諸国においては、悲しいことに欠如している微妙であるが重要な区別である。
野生動物との相互関係においては、北アメリカと同様に、人間の人口が多種の居住生物を侵害し続ける点、もしくは、農村地帯の人口減少が(日本の)都市を囲んだ緩衝地帯を侵食する点が、増加している懸念点として焦点にあてられている。自然との共存は、人気のあるキャッチフレーズであるが、何を必然的に伴っているのであろうか。我々の野生動物に対する取り組みは、コントロールもしくは調和に基づくべきなのだろうか。マタギのような伝統的猟師が有用な見識を示してくれるだろう。
[報告]
第1回人類学研究所主催公開講演として、アイオワ大学のスコット・シュネル(Scott Schnell)教授をお招きし、「野生動物との共存問題ーマタギの文化から学ぶこと」をテーマにした講演会を実施しました。
シュネル氏は、環境科学を研究テーマとする人類学者であり、現在の日本におけるマタギ、およびマタギと狩猟の違いに関して、非常に興味深い内容の講演を展開してくれました。
マタギ文化には潜在的に、"山の神"に捧げる宗教的な意味合いがあるといった儀式的な要素に関しても論じました。世界は、マタギから学ぶべきことが数多くあることなど、マタギにおける環境的な見解を概説しました。Fikret Berkes著の書籍『Sacred Ecology』を引用しながら、TEK(伝統・環境的な知識)とマタギに関する知識、実行、信仰についてや、また狩猟とマタギのメディアにおけるアニメ(バンビetc.)などについても短く紹介されました。堪能な日本語でのご発表で、参加者との質疑応答も活発におこなわれました。