研究活動 活動報告
[共同研究]装いの境界領域に関する人類学的研究(代表:宮脇千絵)
2024年08月03日
人類学研究所共同研究「装いの境界領域に関する人類学的研究」(2022~2024年度)
[代表]宮脇千絵(人類学研究所・第一種研究所員)
1980年代以降の文化人類学では、ある地域や民族集団などの伝統的な装いが、グローバルに広がる生産・流通・消費の過程でいかに変容しているのかを論じてきた。その背景には、観光資源化や文化遺産化に伴う「伝統」の商品化、また西洋ファッションを基盤とするファッション産業への取り込みなどの影響が挙げられる。国境を越えて展開される装いをめぐるこのような動きは、国家や民族、信仰、伝統、ジェンダーなどによって規定されてきた装いの境界を揺るがし、再構築させている。
それでは、このような装いの境界はいかに揺らぎ、再構築されているのだろうか。本研究会では、この問いを明らかにするために、中国・台湾の伝統的衣装に着目する。
中国・台湾では2000年代以降、急激に進む都市化や観光開発、文化遺産登録の動向に伴い、各民族の伝統的衣装が文化資源として再評価されており、民族集団の境界線と装いの差異を一致させることが迫られている。しかし一方で、民族歌舞団のパフォーマンス、民族ファッションショー、観光地やSNSといった文脈で披露・共有される衣装は、一見特定の民族集団と結びついているようで、その差異が不明瞭であることが少なくない。つまり素材や技法、デザインが大幅に改変され、視覚的に担保されるエスニック性が曖昧になっているのである。本研究会ではこの曖昧さを装いの境界領域ととらえ、その内実を明らかにする。
2022年度
▶第1回研究会
日時:2022年8月1日(月) 13:30~15:40(Zoom)
発表:宮脇千絵(南山大学)「装いの境界領域に関する人類学的研究(趣旨説明)」
研究紹介:謝黎(聖心女子大学)
佐藤若菜(京都女子大学)
田本はる菜(成城大学)
総合討論:全員
▶第2回研究会
日時:2022年12月4日(日) 13:00~16:00(ハイブリッド)
場所:人類研所長室、Zoom(ハイブリッド)
発表:宮脇千絵(南山大学)「中国のエスニック・ファッションショー-『絲路雲裳』を事例に」
謝黎(聖心女子大学)「『多彩中国』の映像紹介」
総合討論:全員
▶第3回研究会
日時:2023年3月20日(月) 13:30~17:00
場所:人類研所長室
発表:田本はる菜(成城大学)「『~のようなもの sort of something』としての民族衣装」
謝黎(聖心女子大学)「装いの揺らぎと再構築-民族集団の『境界』の表し方-」
総合討論:全員
2023年度
▶第1回研究会
日時:2023年8月7日(月) 14:00~17:00(Zoom)
発表:佐藤若菜(京都女子大学)「保存から商品開発へ:中国における文化資源としての民族衣装」
総合討論:全員
2024年度
▶第1回研究会
日時:2024年7月28日(日) 13:30~17:00
場所:Zoom
発表:宮脇千絵(南山大学)「中国ミャオ族の古着を仕分けるー手仕事と民族性」
佐藤若菜(京都女子大学)「民族衣装から汚さが消えるとき:中国ミャオ族に関する展示と書籍の変遷から」
総合討論:全員
▶第2回研究会
日時:2024年8月3日(土) 13:30~16:00
場所:Zoom
発表:謝黎(聖心女子大学)「現代中国ファッションにおける民族的な要素の創造と応用ー伝統服/民族服にみる記号的意義」
総合討論:全員