研究活動 活動報告
第2回公開シンポジウム(南山大学研究所連携公開シンポジウム)「葬式はどこから来てどこへ行くのか」
2023年10月08日
ポスターをダウンロード |
第2回公開シンポジウム(南山大学研究所連携公開シンポジウム)「葬式はどこから来てどこへ行くのか」
日 時:2023年10月8日(日)、14:00 ~ 17:00
会 場:南山大学Q棟Q103教室
主 催:南山大学人類学研究所・南山大学社会倫理研究所
使用言語:日本語
プログラム:
「趣旨説明」 渡部森哉(南山大学人類学研究所・人文学部)
報告1「ポストコロナ時代における葬送儀礼の形」
辻本耐(南山大学社会倫理研究所)
報告2「きたない死、きれいな死:葬儀業の職能実践にみる死穢観念の現代的様相」
田中大介(自治医科大学)
「コメント」
石原美奈子(南山大学人類学研究所・人文学部)
西本優樹(南山大学社会倫理研究所)
質疑応答
全体趣旨:
人の死に際してどのように故人を弔うのかは地域、時代によって異なる。特に現在、コロナ禍を経て、葬式のあり方は大きく変化しつつある。
今回のシンポジウムでは、葬式のあり方の動態を捉えるため、人類学、倫理学、心理学など複数のディシプリンから議論をする。葬式を取り仕切る当事者である辻本氏と、長らく葬式の人類学的研究を続けてきた田中氏に登壇いただく。人類学研究所、社会倫理研究所からそれぞれ1名がコメンテーターとして参加する。
報告1「ポストコロナ時代における葬送儀礼の形」趣旨:
コロナ禍の3年間は葬送儀礼の形を大きく変えてしまった。近親者のみで行う家族葬に加えて、無宗教での葬儀や葬儀をしないという選択肢も一般的となった。本発表では、近代以降の葬送儀礼の変遷を振り返りながら、ポストコロナ時代における葬送儀礼のあり方について考えてみたい。
報告2「きたない死、きれいな死:葬儀業の職能実践にみる死穢観念の現代的様相」趣旨:
死と遺体は惨たらしく穢れたものであるという言説が今日でも支配的である一方、禁忌やケガレといった構図だけでは捉えきれない死の様相も存在する。この発表では葬儀業の仕事を題材として、現代的な死穢観念の機制を考究したい。
報 告:
人類学研究所と社会倫理研究所の共同企画として実施された。
社会倫理研究所のプロジェクト研究員の辻本氏が現役の僧侶であり研究者という立場から、葬式の歴史と現状について解説した。人類学者の田中氏は、葬儀会社でフィールドワークを行い、博士論文を執筆した。葬式を人類学的に議論する際にどのような視点があるか、そして研究がどのように推移してきたか、研究史を踏まえ現状について解説した。葬儀業の視点に立脚し、死穢観念、職業意識を本質的に捉えるのではなく、常に変化している実態を直視する重要性が指摘された。
コメンテーターの西本氏は元警察官として勤務し、東日本大震災の際に現地において死者をどのように扱ったかという視点などからコメントした。石原氏は人類学者という立場、また学生を指導する立場からいくつかコメントをした。
今回のシンポジウムは、多くの関心を呼び、開催前から多くの問い合わせがあった。また当日は、学内の多くの学部の教員や事務職員が参加した。葬式が現代的に極めて重要なテーマであることは浮き彫りになった。簡単には一般化できないのが葬式のあり方であり、常に変化している実態が浮かび上がった。そうした葬式の動態を他の要素と組み合わせながらパターンを抽出していくことが今後の作業の1つとなろう。