研究活動 活動報告
第2回公開シンポジウム「中国におけるプーアル茶の流通史と消費の現状」(国際化推進事業「なりわいと移動の人類学:中国圏の研究者との共同から」関連企画)
2024年07月20日
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第2回公開シンポジウム「中国におけるプーアル茶の流通史と消費の現状」(国際化推進事業「なりわいと移動の人類学:中国圏の研究者との共同から」関連企画)
日 時:7月20日(土) 14:00〜17:00
会 場:南山大学G23教室・Zoom
主 催:南山大学人類学研究所
言 語:日本語(中国語からの通訳あり)
プログラム:
14:00-14:05 開会挨拶
14:05-14:15 趣旨説明張雅(南山大学人類学研究所・プロジェクト研究員)
14:15-14:55 西川和孝(明治大学・准教授)
「清代民国初期のプーアル茶の栽培と流通について」
15:00-16:00 張静紅(南方科技大学・准教授)
〈越陈越香的发明:普洱茶在中国云南和大珠三角之间的流动〉
(茶を熟成させるという発明:中国雲南省と珠江デルタ地域で流通するプーアル茶)
(通訳・袁夢)
16:15-16:30 コメント王曉葵(南方科技大学・教授)
16:30-17:00 質疑応答
17:00 閉会の辞
参加登録:
ご参加いただくには事前登録が必要です。
下記のURLまたはQRコードからお申込ください。
締切:7月20日12時自動返信されるメールにzoomの案内があります。
https://app.nanzan.ac.jp/regform/regist/univ/jinruikenreception/2ndsymposium
趣 旨:
中国の雲南省はプーアル茶の主な産地として、宮廷に献納する貢茶の生産やチベットの少数民族に供出する茶の生産など、歴史的な役割を果たしてきた。現在、雲南省のプーアル茶はグローバル化とともに、世界各地に輸出されている。プーアル茶の流通も国境を越えるとともに、新たに文化的、経済的、社会的などの価値が付与され、地域レベルのみならずナショナル的なレベルでも消費を通して茶文化の形成に寄与しながら大きなソフトパワーを発揮している。
そのような背景を踏まえ、本シンポジウムは主に中国国内の状況に着目する。歴史的な視点と現地調査に基づき清代から現代にかけてプーアル茶の生産と流通の実態が各時期の政治的、社会的な文脈の中でどのように変化し、いかに人々の経済状況とライフスタイルに影響を与えてきたのかを検討する。
報 告:
本シンポジウムは南山大学人類学研究所国際化推進事業の一環として、今年度第2回公開シンポジウムとして企画されました。キャンパスの教室には学生を中心に約34名、オンラインでは約24名、合計58名ほどの参加がありました。
西川和孝氏のご報告では、石屏漢人が周辺の茶山に入り込み、プーアル茶の栽培を開始したことが指摘されました。彼らが茶市場の開拓とインフラの整備などの活動によって、山地民に茶の栽培技術を移転し、現地社会で勢力を拡大したことが明らかにされました。
張静紅氏はプーアル茶の栽培から流通、消費のサプライチェーンのプロセスを長期的に追ってこられました。ご発表では、熟成させるほど価値が上がるというプーアル茶の消費傾向の背景には、茶が生産地から消費地に流通し、その地域の消費者の好みと習慣によって新たな定義と価値が見出されるという過程があることを明らかにされました。
登壇者のご報告後、南方科技大学の王曉葵氏から、漢民族がどのように苛酷な賦税を耐えながら高品質なプーアル茶を栽培していたのか、個々人の身体的な感覚にもよるが、プアール茶の「本物らしさ」と美味しさは誰がどのように決めたのかという問題提起がなされました。質疑応答では、参加者から「普洱茶が歴史的に現代と同じような形態であったのか、あるいはどのような形態で変化したのか」などの質問が寄せられて、闊達な議論が繰り広げられました。
本シンポジウムの登壇者のご報告を通じて、参加者が清代から現代にかけてプーアル茶の生産と流通についての理解を深めることができたと考えます。また、中華圏の研究者と交流する貴重な機会ともなりました。(文責:張雅)