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南山大学社会倫理研究所・上智大学生命倫理研究所共催公開シンポジウム2018
2018年09月03日
南山大学社会倫理研究所・上智大学生命倫理研究所第8回共催公開シンポジウム2018開催のお知らせ
下記の通りシンポジウムを開催致しますので、ご案内申し上げます。 どなたでも参加は自由(無料)です。出席されます場合は、事前に受付フォームよりご連絡いただけると幸いです。(当日参加でも結構です。)
日時 | 2018年10月13日(土) 14:00~17:30(13:30開場) | |
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場所 | 南山大学 B棟2階 B21教室 アクセスについてはこちらをご利用下さい。 |
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全体テーマ | Stranger Ethics: 人は〈よそ者〉の何を恐れるのか? | |
趣旨 | 時代や地域を問わず、特定の社会やコミュニティでは、難民、移民(移住者)、ホームレス、出稼ぎ労働者等、いわゆる〈よそ者〉をめぐって、しばしば深刻な対立や軋轢が生じる。それぞれに異なる文脈的背景と原因に由来するそうした事態を理解する際に、個々の問題状況を丁寧に踏まえることなく問題を過度に一般化することは、本来多様な属性を有する個々の存在に対して〈よそ者〉としてのステレオタイプな反応や忌避感を引き起こすことにつながる。実際、問題を十把一絡げに断ずる言説は絶えないし、それに対する対抗言説が奏功しないことも少なくない。まるで多文化共生的な掛け声と排外主義的な心性はコインの表裏であるかのようである。いずれにせよ、〈よそ者〉について倫理的に思考するための、個々の問題を包括的に見通すための視座が必要である。そこで本シンポジウムでは、〈よそ者〉と〈恐れ〉という視座からこれらの問題を捉え直し、その本質に迫ることを試みる。〈よそ者〉は時に歓迎され時に疎まれる存在であるが、〈よそ者〉が疎まれ恐れられる場合に、何らかの社会的軋轢や問題が生じると考えられる。またそこでは同時に、〈よそ者〉自身が社会やコミュニティに対して恐れを抱いてもいるだろう。恐れは冷静な問題把握を阻害しがちであり、相手への敵意や暴力を生み出すことも少なくない。そこで問われるべきは、〈よそ者〉に(あるいは〈よそ者〉が)恐れを抱くとき、一体何について恐れているのか、そして、そうした恐れに対してどのように対応すべきか、ということであろう。より根本的に考えるなら、そもそも〈よそ者〉とは誰であり、人が自らを〈よそ者〉でないと自認するのはどういうことなのか、といった〈よそ者〉の境界問題も視野に入る。本シンポジウムでは、様々な形で問題化される〈よそ者〉をめぐる社会倫理について、哲学、社会学、心理学の観点から包括的に考察し、排外的な心性が見え隠れするかのような昨今の世界情勢にあって短絡的思考に陥らないための処方箋のありかを探ることを試みる。 |
演題1 | 〈よそ者〉どうしの倫理―カントの世界市民論から考える | |
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報告者1 | 寺田俊郎(てらだ・としろう)(上智大学文学部教授) | |
趣旨 | 哲学者カントが世界市民の法=権利として「歓待(友好)」を語ったことはよく知られている。「歓待」は特定の国家に対する〈よそ者〉の権利であるから、世界市民の法=権利とは〈よそ者〉の法=権利だということになる。しかし、カントのいう世界市民は国家に対する〈よそ者〉だけではない。所属する特定の集団の外にあえて身を置いて思考する人、つまり自ら進んで〈よそ者〉になる人も世界市民だという。そして、そもそも哲学の営みは、そのような〈よそ者〉としての世界市民の立場で行われるものだと説く。このような〈よそ者〉としての世界市民をめぐるカントの議論を手掛かりとして、〈よそ者〉であるとはどういうことか、人は〈よそ者〉の何を恐れるのか、を考えたい。 | |
演題2 | 社会学的〈よそ者〉論の課題と展望―社会学説史・在日外国人研究の知見から | |
報告者2 | 徳田剛(とくだ・つよし)(大谷大学社会学部准教授) | |
趣旨 | 本報告では、社会学分野における〈よそ者(stranger)〉の語られ方、とりわけG・ジンメル、R・E・パーク、A・シュッツ、Z・バウマンらの論者による〈よそ者〉の概念規定とその論説内容を概説する。次に、日本の地方在住外国人に関する地域研究に従事してきた報告者の知見に拠りながら、地域社会と〈よそ者〉の関係性を問うフィールドワークにおける同概念の分析効果について考察する。これらの議論を踏まえた上で、学問分野間でのstranger概念の訳語選択の違いや概念規定の齟齬など、学際的な〈よそ者〉研究に向けてクリアすべき課題と展望について言及したい。 | |
演題3 | 〈よそ者〉を恐れる心 | |
報告者3 | 土屋耕治(つちや・こうじ)(南山大学人文学部講師) | |
趣旨 | 「〈よそ者〉の何を、また、なぜ恐れるのか。」本発表では、これらの問いに対し、ステレオタイプの機序をはじめ、私たちが根本的に抱えている死への恐怖の防衛反応として様々な社会的行動を説明する「存在脅威管理理論 (Terror Management Theory)」を紹介し、〈よそ者〉を恐れる心を論じたい。さらに、ヨソ・ソト・ウチという対比のなかで、自他の境界、自分の中にある〈よそ者〉という点についても考察を加え、新たな視座の提供を目指す。 | |
司会兼討論者 | 奥田太郎(おくだ・たろう)(南山大学社会倫理研究所第一種研究所員/人文学部教授) |
報告者紹介 | |
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寺田 俊郎 | |
《略歴》 | 京都大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科修士課程修了。同大学大学院文学研究科博士後期課程学修退学。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。明治学院大学助教授、同大学准教授を経て、現職。 |
《専門領域》 | 哲学・倫理学、臨床哲学 |
《主要著書》 | 『世界市民の哲学』(共編著)晃洋書房、2012年。「共同の哲学的探究としての倫理学」『倫理学年報』第63巻、2014年。『グローバル化時代の人権のために―哲学的考察』(共編著)上智大学出版、2017年。 |
徳田 剛 | |
《略歴》 | 神戸大学大学院文学研究科修士課程修了。同大学大学院文化学研究科単位取得退学。博士(学術)。神戸大学文学部助手、聖カタリナ大学講師・准教授・教授を経て、現職。 |
《専門領域》 | 地域社会学、宗教社会学、理論社会学 |
《主要著書》 | 「G-ジンメルの『空間の社会学』―空間・都市・移動をめぐって」『社会学史研究』第39号、2017年。『外国人住民の「非集住地域」の地域特性と生活課題―結節点としてのカトリック教会、日本語学校・民族学校の視点から』(共著)創文社出版、2016年。「Z・バウマンの社会秩序観―『よそ者』と『社会的距離』の視点から」『社会学史研究』第32号、2010年。 |
土屋 耕治 | |
《略歴》 | 名古屋大学教育学部卒業。同大大学院教育発達科学研究科博士前期課程修了。同大大学院教育発達科学研究科博士後期課程単位取得退学。2011年4月より現職。 |
《専門領域》 | 社会心理学、体験学習、組織開発。 |
《主要著書》 | 「組織の『時間』への働きかけ:組織開発における組織診断の事例から」『実験社会心理学研究』第56巻、2016年。「ラーニングピラミッドの誤謬―モデルの変遷と"神話"の終焉へ向けて」『人間関係研究』第17号、2018年。 |
奥田 太郎 | |
《略歴》 | 京都大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科修士課程修了。同博士後期課程指導認定退学。博士(文学)。南山大学社会倫理研究所講師、同准教授を経て、現職。 |
《専門領域》 | 倫理学、応用倫理学 |
《主要著書》 | 『倫理学という構え』(単著)ナカニシヤ出版、2012年。『失われたドーナツの穴を求めて』(共編著)さいはて社、2017年。『責任と法意識の人間科学』(共編著)勁草書房、2018年。 |
主催 | 南山大学社会倫理研究所 |
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共催 | 上智大学生命倫理研究所 |
連絡先 | 南山大学社会倫理研究所 〒466-8673 名古屋市昭和区山里町18 Tel: (052)832-3111(代表) Fax: (052)832-3703 E-mail: ise-office@ic.nanzan-u.ac.jp |
*本研究所主催シンポジウムでは、講演録作成のために写真撮影と録音を行なっております。 |