社会倫理研究奨励賞 歴代受賞論文
第6回社会倫理研究奨励賞
2013年02月15日
2013年2月15日に行なわれた第6回社会倫理研究奨励賞選定委員会における厳正な審査の結果、下記論文を受賞論文と決定いたしました。
- 受賞論文 「国際刑事裁判のディレンマの政治構造」
- 【掲載誌名】『平和研究』第38号、2012年4月30日、57-76頁
- 著者 湯澤(下谷内) 奈緒
受賞論文 講評
鷲田清一(第六回社会倫理研究奨励賞選定委員会委員長)
今年は、国際的な政治・経済問題に関するものからビジネス倫理、性同一性障害をめぐるものまで、広範囲の主題にわたり、数としては昨年とおなじ11篇の応募があった。そのなかから第一次選考において5篇を選び、そのあと審査委員による合議で、湯澤奈緒氏の「国債刑事裁判のディレンマの政治構造」に第6回社会倫理研究奨励賞を授与することに決定した。
選考にあたっては、湯澤論文が、ジェノサイド、戦争犯罪などの反人道的行為を国際法上の犯罪として停止させるための国際的な刑事裁判機関(ICC)の役割について、過大評価も過小評価もともに斥けながら、ICCへの付託が紛争(の終結)に与える影響をめぐる制度論的な課題と限界とを、限られた紙幅のなかで丁寧に描きだしている点が高く評価された。なかでも、国際刑事裁判への当該国家の自己付託の例と国連安保理による付託の例とを対照的に検討し、それをつうじてこの難題の難題である所以を浮き彫りにするという構成が、議論をより明快なものとしている点が注目された。ただし、国際社会の正義・平和との関連で国際刑事裁判を語るのであれば、不処罰をめぐる問題や、裁判以外の方法による和解なども視野に入れて議論を展開したほうが説得的だったのではないか、との意見もあったことを付記しておきたい。今後は、著者自身のいう「正義の追及による平和が抱えるディレンマの構造的要因」についてさらなる掘り下げをおこなうとともに、国際刑事裁判そのものが抱える倫理的問題についても議論を深められることを期待したい。
最終候補論文(佳作)
自薦・他薦併せて11篇の応募論文の中から、最終審査に残った最終候補論文は以下の通りです。
- 永守伸年「障害者の自己決定論:自律と合理性の観点から」(『Contemporary and Applied Philosophy』vol. 3)
- 佐藤史郎「「核の倫理」の政治学」(『社会と倫理』第26号)
- 杉本俊介「フォード・ピント事例と功利主義」(中谷常二編『ビジネス倫理学読本』晃洋書房)
第六回社会倫理研究奨励賞選定委員会
- 鷲田清一(大谷大学教授)【委員長】
- 瀬口昌久(名古屋工業大学教授)
- 花井敏(南山大学経済学部教授)
- 丸山雅夫(南山大学大学院法務研究科教授)
- 山田哲也(南山大学総合政策学部教授)
- マイケル・シーゲル(南山大学社会倫理研究所第一種研究所員)
- 大庭弘継(南山大学社会倫理研究所第一種研究所員)
- 奥田太郎(南山大学社会倫理研究所第一種研究所員)
- 鈴木真(南山大学社会倫理研究所第一種研究所員