研究プロジェクト プロジェクト一覧
「いのちの支援」研究プロジェクト(2015年-)
2016年01月18日
本プロジェクトは、自殺の問題を中心に、私たちの生命、生活、人生に関わる諸問題を「いのち」の問題と捉え、その対処について、当事者の自律的な活動から国・行政の施策に至るまでを幅広く「支援」と位置づけ、「いのちの支援」にかかわる多様な課題について総合的に取り組む研究プロジェクトです。
人の「いのち」に直接かかわる重大な問題として、自殺を挙げることができます。周知のように、自殺は自分で自分のいのちを絶つ個人の行為ですが、それは結果として家族だけでなく社会全体に強い影響を及ぼします。その意味で、自殺の問題は、私たち一人ひとりにとっての重要な「いのち」の問題となります。
日本では、2006年の自殺対策基本法成立後、自殺の問題は社会の問題として、国や行政、そして社会全体で対策に取り組むべき問題だと考えられるようになりました。それは、自殺が個人の自由な選択によるものというよりむしろ、様々な社会的要因によって「追い詰められた末」に発生する構造的問題だと認識されるようになったからです。上記法律の成立以降、日本では従来の民間団体の取り組みに加え、内閣府をはじめとする中央省庁、地方自治体による自殺対策の取り組みがなされるようになりました。そして、結果として自殺者数を減らすことができました。
現状の対策では、自殺者数に注目し、それを減少させることを目指してきました。しかし、自殺者数は減少したといっても急増前の人数に落ち着いたにすぎず、現状の対策は対症療法以上のものではありません。そこで、自殺者数という結果にのみ注目するのではなく、自殺という結果をもたらすプロセスを、個人および社会的な視座から丁寧に捉えることが必要となります。そのプロセスの中では、ドメスティックバイオレンス、児童虐待、貧困、育児・介護など、様々なものが重層的に関連しながら、大きな問題系を形成しています。
本プロジェクトでは、こうした系をなす一連の問題群を「いのちの支援」の課題として捉え、異領域の研究者・実務家との共同研究を行い、よりよき解決の方途をみいだすことを目指します。そして、研究者をはじめ実務現場にかかわる人々を含めた探求プラットフォームを設定し、そこを基盤として共同研究を進めていきます。