研究所紹介 所長あいさつ
ご挨拶
南山大学社会倫理研究所は、1980年5月に設立されてから、2015年で35年となる歴史を歩んでまいりました。当研究所は、現代社会のさまざまな動向がもたらす倫理問題を包括的に探究し、南山大学のモットーである「人間の尊厳のために」の内実を明らかにするとともに、「善き生」を支える教養の再建を目指して、現代の社会倫理的な問題について様々な学術的活動に取り組んでいます。
世界はいまや環境問題、民族問題、グローバリゼーションに伴う富の偏在と貧困の拡大、戦争と平和、科学技術の社会的制御など、細分化した諸学によっては解決不可能な深刻な問題に直面しています。そのような中で、南山大学はカトリック大学として、キリスト教精神のもとに、諸科学の統一と学問の本来的な目的の回復を志向してきました。しかし、20世紀を通じて、経済の成長が社会の急速な世俗化をもたらすとともに、自然科学や社会科学の発展が学問分野の際限なき細分化、専門分化を引き起こしたため、「諸科学の統一」という理念を実現することはきわめて困難になっています。こうした状況を背景として、南山大学は、自然科学や社会科学の推進に十分な配慮をしつつ、包括的な視点から現代社会における倫理的問題に取り組むべく、当研究所を設立いたしました。
現在、当研究所は、専任の研究所員(第一種研究所員)、学部・大学院と兼任の研究所員(第二種研究所員)、学外の共同研究者(非常勤研究員)から構成される体制のもとで、様々なテーマの研究プロジェクトを共同で進めています。それぞれの専門領域は哲学、倫理学、法学、政治学、歴史学、社会学、経済学など多岐にわたり、学内外(国内外)の研究者や実践家とともに、特定テーマに基づく学際的共同研究プロジェクトを継続的に実施しています。さらに、一般公開の懇話会、ワークショップ、シンポジウムなどを定期的に開催し、様々なテーマについて広く市民の方々に議論を開くことを試みています。また、当研究所が定期刊行している機関学術雑誌『社会と倫理』では、綿密な企画に基づき、学際的な観点から重要な倫理的諸課題を扱った特集や論文、近刊の学術書への書評を毎号お届けして、既存の学術共同体では扱い切れない部分にまで触れうるような議論の提供を目指しています。詳しくは、本ウェブサイトおよび各種刊行物をご覧ください。
当研究所は、これからも地に足のついた研究所活動を続けてまいりますので、今後とも、ご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
2024年4月1日 南山大学社会倫理研究所 所長 Winibaldus Stefanus Mere