戸田 由紀子
専門
私の専門は、アメリカ文学・カナダ文学を中心とする英語圏文学です。とくに19世紀から現代に至るアフリカ系女性作家および北米アジア系作家の小説において、社会の中で周縁化された人々の経験がいかに語られ、その背後にある構造的マイノリティ化の過程がいかに描き出され、支配的な歴史や社会認識にいかなる問題を呈してきたかを研究しています。
研究を始めたきっかけ
研究のきっかけは一つではありませんが、原点の一つは、小学生の頃にアメリカ黒人奴隷の物語に触れ、肌の色の違いによって人間の尊厳や命の価値が否定される歴史に大きな衝撃を受けたことです。その後、大学でアリス・ウォーカーやトニ・モリスンをはじめとするアフリカ系女性作家、さらにヒロミ・ゴトーやマドレン・ティエンなど北米アジア系作家の作品に出会いました。文学が社会の不平等や抑圧を自らの問題として考えさせる力をもつことを実感し、社会の中で周縁化されてきた人々の声や文学表象を研究する現在の研究へとつながっています。
研究の学術的意義
これまで、アメリカ、カナダをはじめとする英語圏文学に描かれる人種、ジェンダー、戦争の記憶、植民地主義をめぐる語りを比較文学的に分析し、社会の中で周縁化された人々の経験が、支配的な歴史や社会認識をいかに問い直してきたのかを考察してきました。文学の通時的な変遷と地域横断的な比較分析を通して、社会の制度や歴史、文化の中で生み出される周縁化の構造を可視化し、アイデンティティや属性に焦点を当てる従来の分析を補完するとともに、周縁化の過程や構造に分析の軸を移す理論的枠組みの構築を目指しています。
研究の社会的意義
私の研究は、文学を通して他者のものの見方や考え方、歴史的背景、文化、宗教など、多様な世界への理解を深めることを目指しています。文学は、他者の視点から世界を体験し、その痛みや葛藤を自らのこととして感じる経験を可能にします。自分とは異なる歴史的・文化的背景を持つ他者を知り、その立場を想像し、共感することは、多文化共生社会における相互理解と対話を育み、平和な社会を築く基盤になると考えています。
将来の研究の展望
今後は、アメリカ・カナダ文学に加え、マレーシアやシンガポールなどアジアの英語圏文学を含めた地域横断的な比較研究をさらに進め、多様な歴史的・文化的背景のもとで形成される周縁化の経験や構造を、より多角的な視点から考察していきたいと考えています。また、研究・教育・調査・国際交流を有機的に結びつけ、シームレスな学びを大切にしながら、研究成果を教育と社会へ還元していきたいと考えています。
代表著書
研究者紹介
